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素敵なVisual Life

豪州でのハッピー・リタイアメントは、
妻に出会えたからこそ掴めた幸運

元実業家:青木博さん

家紋入りの包装紙で包んだ会社の真心。
あれこそ、私がつくった会社の象徴でした

―― 最近では、ご家族だけでそっと見送られる方が増えていますが、当時のご葬儀はだいぶ様子が違いましたか?

青木さん「そうですね、昭和の時代は今よりも親世代がもっと若くして亡くなることが多く、まだ現役であったり、退かれて間もなかったりということもあり、故人にゆかりのあった方々みんなに集まっていただき、大きな規模の式で送ってあげたいと考える子世代が多かったんですよ」

―― 会社を立ち上げたときには、何人でのスタートだったのでしょうか?

青木さん「内勤と営業員で14名からの出発でした。営業員は子どもに手がかからなくなった年齢の既婚女性が多かったですね」

―― 女性参画が叫ばれる現代の感覚から見ても、ずいぶんと先進的な会社をつくられたのですね。それは、あえて既婚女性を選ばれたということでしょうか?

青木さん「身近な方を亡くされたばかりの喪家に葬儀後まもなくに“葬儀社直営の外商部”として訪問するには、男性よりも女性のほうが適していると考えました。平均して一番多い葬儀は“高齢の親を送る葬儀”です。喪家夫婦と同年配の女性には、自身が葬儀の経験をした者もおり、ご遺族の気持ちを理解できるのです。遺族の方の心情に寄り添い、信頼関係が築ける人材でないといけませんから……」

―― なるほど。その細やかな心遣いが評価されて、会社が急成長されたのですね。

青木さん「ですから感謝の想いを込めて、慰安旅行には、参加希望のパートの方もいれて総勢100数十名の社員を連れて、海外にもよく出かけました。必ずゴルフのオプション付きで。ハワイにも3回は行きましたね。会社は年中無休でしたので……、毎年、2班に分かれて海外旅行に行きましたね。
それもこれも社員のみなさんが、よく働いてくれたおかげです。みんなががむしゃらに働いていました」

―― ある意味、「企業戦士」などという言葉の生まれた昭和ならではの働き方なのかもしれませんが、むしろ昭和だからこそ、既婚女性がやりがいを感じながら仕事をされている職場は珍しかったのではないですか?

青木さん「そうかも知れません。頑張った甲斐を実感していただけるだけのお給料を支払うようにしていましたから。頑張ればそれに応えるかたちで、月に100万円の給料を得る社員もおりました。平均は60万円くらいでしたね。高級車や、マンション購入……、実際に女性が自分ひとりの力で購入していました。面接時に“希望給料は50万円以上欲しい”といえるくらいの意欲・体力・気力のある方、そして“どこか華のある”人材を求めていました。ですから、結構、採用は慎重に厳選しました」

―― 成果主義ということですか。昭和の日本企業は年功序列の終身雇用が当たり前でしたでしょうに、まるで外資系の企業のようですね。

青木さん「確かに、珍しかったでしょうね。でも、本当に一番のうちの会社らしさというのは、香典返しのお品物を包む、包装紙に表れていたと思います。故人をお悔やみする気持ちを大切に!をモットーとしてお返し品を包む包装紙には、故人の戒名と家紋を印刷していたのですが、このようなサービスを行っていたのは、同業者の中でも、うちの会社くらいでした。どんな小さな商品でも、包装したときに必ず家紋がちょうど真ん中に入るように一つひとつ心を込めて包むのです。いろいろな形のものがありますから、これが意外と手数のかかる作業で……。それでも、家紋入りの贈り物が届けば、“ああ、あの方の”とすぐにお分かりいただけますので、よもやぞんざいに扱われることはないでしょうし、故人を偲んでいただけますでしょう? みな、遺族の想いをお届けする仕事に熱意をもっておりました」

―― とても細やかで、真心のこもった気配りを大切にされる会社だったのですね。それだけ多くの女性がついて来られたということは、青木さん、かなりおモテになりましたね(笑)。

青木さん「はい、モテました(笑)」

―― 女性社員のモチベーションを引き出すコツは何ですか?

青木さん「女性に限らず社員全員に目を配り、“ちゃんとあなたの頑張りは見ていますよ”という意思表示がわりに、まめに声掛けをすることではないですかね。その人、一人ひとりに会った声掛け……、そんな小さなことに女性は案外敏感ですので、なかなか難しいことでもありましたね(苦笑)。
お給料だけでなく、いつも、どうやったら楽しく働いてもらえるかを考えていたんです。“働くのも精一杯! 遊ぶのも精一杯!”を楽しむのが、わが社の伝統でした。とにかく面白い会社でしたね」

「モテた」と、これだけ爽やかに言い切れて嫌味の一つも感じさせないところは、正真正銘のモテ男のなせる業である。「誰かが自分を見てくれている」、これが本当に「存在が肯定された」かのように心強いことだということは、コロナ禍の孤独になりがちな「今」だからこそ、身に染みてそう思う。

邸宅の中で、青木さん一番のお気に入りの場所が、カウンターバー(写真正面奥)のあるリビングなのだそう。
湖面越しに見やる、ゴールドコーストのビル群を包み込む夕景。

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